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山楽人2
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2023年06月02日

6月1日(木) 汐首324.8峰

 函館市の汐首山(汐首岬)は自然部企画の山野草観察でよく訪れるが、今回はC210の三叉路から北東に向かう林道を辿り、会企画として初めて324.8峰(三等三角点、点名:釜谷)まで足を伸ばした。参加は17名。

 釜谷地区の国道278号線から、324.8峰の一角を仰ぐ。山全体の緑が色濃くなってきた。頂上は見えない。
釜谷地区の国道から325峰の一角

 9時5分、林道ゲート前を出発する。すぐに樹木や山野草の花々が出迎えてくれる。先ず、木の花から。[左上]カマツカ(鎌柄)は材が緻密で非常に堅いので鎌の柄に用いたことから名付けられた、[右上]ミツバウツギ(三葉空木)は枝の芯が空洞でなく、白い髄が詰まっているらしい、[左下]カンボク(肝木)の白く見えるのは装飾花で、小さな花が中央部に集まる、[右下]キンギンボク(金銀木)は赤い果実2個が合わさって瓢箪状になるのでヒョウタンボク(瓢箪木)とも呼ばれ、熟した実は有毒。
木の花4態

 今を盛りのタニウツギ(谷空木)。花は明るい紅色で、別名ベニウツギとも呼ばれる。稀に変異した白花を付ける株もある。
タニウツギ

 オオマムシグサ(大蝮草)を発見。
オオマムシグサ

 山野草の花を4枚どうぞ。[左上]オオバナノミミナグサ(大花の耳菜草)、[右上]チシマフウロ(千島風露)は北海道の海岸地帯にも分布・生育する、[左下]ジンヨウイチヤクソウ(腎葉一薬草)か、葉脈に沿って白い斑がある、[右下]ハナニガナ(花苦菜)。
草の花4態

 エゾヤマツツジ(蝦夷山躑躅)が元気よく咲いていた。
エゾヤマツツジ

 C210の三叉路に到着し、花探索を兼ねて休憩。この付近は、NHKドラマ「坂の上の雲」において、日露戦争で繰り広げられた「二〇三高地」の争奪戦を撮影したロケ地に選ばれた。そのため左の丘(288m)を、仲間内で「203高地」と呼んでいる。
C210三叉路から「203高地」

 この前後で見られた植生を4枚。[左上]ヤマナシ(山梨)の実、栽培種のナシの原種だとか、[右上]ツボスミレ(坪菫)は別名をニョイスミレ(如意菫)とも、[左下]エゾハタザオ(蝦夷旗竿)の葉は長楕円形で先は尖り、縁に鋸歯がある、[右下]ハクサンチドリ(白山千鳥)を3株見つけた。
実・花4態

 滅多に現れず、とても面白い形をした雲を見つけたので、全員で眺めた。写真の中央に、葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」のような形の波がいくつも並んでいる。これは、流体力学の概念である「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性」が雲の形に表れたもので、二つの空気の層で密度や速度が異なると、その界面では安定性を保てず、交じり合うように渦が発生する。不安定性が長続きしなかったか、この雲は発見から10分ほどで形が崩れた。
ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲

 頭上を見ると、太陽のすぐ周りを囲むように幾重にも虹色の環が見られた。輪が小さいので、日暈(22度ハロ)ではない。花粉の粒子によって太陽の光に回折・干渉が生じて色が分かれて見える「花粉光環」という現象だと思われる。本州から南では、3月から4月にスギ花粉による光環が見られるが、この時期の北海道で多く飛ぶシラカバ(白樺)の花粉によるものだろうか。
花粉光環か

 エゾヤマツツジやタニウツギの花に囲まれた林道を、ゆっくり進んでいく。心が落ち着くひととき。
エゾヤマツツジとタニウツギが咲く道

 上空は風が強いようで、高積雲が波を打っていた。上空の風は手前(西)から前方(東)に、雲の波に直行する方向に吹いている。実際にも、室蘭の約6km上空で、秒速25mほどの強い西風が観測されていた。
波状高積雲

 標高点291がある丘の肩を過ぎると、目指す324.8峰のなだらかな山容が目の前に現れた。C250のコルに向かう下り斜面で、野性馬(飼育を放棄された馬)の群れがのんびりと草を食べていた。
 ここの馬に人参などを与える人がいると聞くが、餌をくれると思って近づく馬に噛まれる恐れがある。林道ゲートに、馬にはむやみに近寄らないよう、注意を促す看板が付けられている。
C250コルの野生馬の群れと324.8峰

 324.8峰に登る途中、エゾヤマツツジが満開になっていた。麓の釜谷海岸を入れて1枚。
エゾヤマツツジと釜谷海岸

 11時1分、たおやかな324.8峰の頂上に到着。三等三角点(点名:釜谷)の石標が設置されている。
324.8峰に到着

 恵山方面を背景に、横一線に並んで全体集合写真を撮る。気分爽やか…。
恵山を背景に全体集合

 頂上からはまさに360度の大展望。左回りに、ぐるりと紹介します。まず南東方向には通信施設が建つ汐首山と、津軽海峡越しに下北半島の山々。
汐首山と下北半島

 東北東方向には活火山の恵山(右、617.6m)と、外輪山の最高峰である海向山(左、569.4m)。
恵山と海向山

 北東方向には、北海道最初の一等三角点に選点された古部丸山と、標高こそ低いが良く目立つ姿の丸山龍神宮の山。
古部丸山

 北西方向には、見る場所によって山容が違って見える三森山(842.1m)と、左奥には横津岳(1167m)。
三森山と横津岳方面

 西には手前に函館山(334m)。左奥に当別丸山、右奥に桂岳を従えて…。
函館山方面

 南西方向に、左は知内山塊(最高点は仮称:知内岳、850m)、右は千軒岳山塊(最高点は大千軒岳、1071.9m)。
知内山塊と大千軒岳[右]

 この日は西風が吹いていたため、飛来する航空機は、津軽海峡を越えてから汐首山付近で左に旋回し、向かい風を受けて函館空港に着陸する。滑走路の手前を降下している飛行機が見えるだろうか。
函館空港に着陸する航空機

 空を見上げると花粉光環は消え、代わって日暈(22度ハロ)が現れていた。
日暈

 11時16分に頂上を後にして、また山野草を探索しながら往路を戻る。目にしたのは、[左上]松の雌花(縦長軸の先端に付く)と雄花(長粒米のような橙色)、松かさ、[右上]ササバギンラン(笹葉銀蘭)、[左下]ヒメイズイ(姫委蕤)、[右下]エゾカンゾウ(蝦夷萱草)は、昼前の登りでは花を閉じていた。
花4態

 石英を含む綺麗な白い岩塊をいくつか目にする。Okさんによると、函館や近辺ではかつて火打石として使い、「きんから石」と呼んでいたそうな。
石英の岩塊

 タニウツギが咲くC250のコルで昼食をとる(25分間)。西に雪が残る大千軒岳と七ッ岳を望むことができた。
大千軒岳と七ッ岳

 標高点291がある丘を過ぎ、288mの丘(仲間内で呼ぶ「203高地」)を越えて下っていくと、別の馬の一団がいた。仔馬も3頭見かけた。
「203高地」斜面の野生馬

 C210の三叉路に戻ると、太陽の下(南方向)にごく薄く分光した水平な虹が見えた。残念ながらカメラには写らなかった。「環水平アーク」であろう。5月18日の恵山(山野草探訪)でもうっすらと見えた現象。上空にある氷晶(鉛筆のような細かい六角柱)で太陽光が屈折して生じるもので、太陽高度が58度以上(4月~9月の昼前後)の時に太陽の下(角度では46度)に現れる。しっかりと太陽が照っていて、周りに薄い巻雲や巻層雲がある時が見られるチャンスです。
薄く環水平アーク

 13時15分、林道ゲートに到着して下山を終了。メンバー確認と挨拶を済ませて解散した。
 頭上を見上げると、太陽の周りに円形の日暈が架かり、それを取り囲むように楕円形の輪が重なっているように見えた。上端と下端の輪の幅が狭くて虹色も強い。
 日暈(22度ハロ)に接して現れる「上端接弧(上部タンジェントアーク)」と「下端接弧(下部タンジェントアーク)」は、太陽高度が低いと上端接弧と下端接弧にはっきりと分かれ、いずれも太陽に凸の形をしている。ところが、太陽高度が40度以上になると上端接弧と下端接弧は太陽に凹の形にかわり、先端がくっついて日暈(22度ハロ)を楕円に取り囲むような形状になる。この状態は「外接ハロ」と呼ばれる。
外接ハロ

 今回の山野草観察は、たくさんの花の他に、360度の大展望、雲や太陽の珍しい現象など、盛りだくさんのイベントに恵まれた。
 馴染みの少ない現象の名前も紹介したので、興味があれば、「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性」、「花粉光環」、「環水平アーク」、「外接ハロ」などを検索してみてください。



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