2025年05月20日
5月14日(水) 日浦海岸・山道散策
自然部企画で昨年の同時期に続き、函館市(旧・恵山町)の日浦町地区から豊浦町地区にかけて、海岸道路と「サンタロトンネル」上の山道を散策して、春の山野草観察を楽しんだ。参加は17名(フリー2名を含む)。
日浦町地区から恵山岬方面に向かう国道278号線「サンタロトンネル」の手前で、海岸沿いに道道41号線(旧・国道)が分岐している。この道を少し入った先の昆布干し場の脇に車を停めさせてもらった。
9時40分、豊浦町地区に向けて出発。海岸に落ち込む岸壁をくりぬいた、「日浦洞門」と呼ばれる7つのトンネルに向かう。

最初に見かけたのはオドリコソウ(踊子草)。花の形が、笠をかぶった踊り子に見える。

二つ目のトンネルを出たところで、俄雨が降ってきた。10分ほどで雨雲が抜けそうなので、三つ目のトンネル内で雨宿り。

頭上の岩場には、朱色が鮮やかなエゾヤマツツジ(蝦夷山躑躅)。

狭い道路を、車に注意しながら進む。前方には採石場の跡。山道は、あの岩場の上を通っている。

タヌキラン(狸蘭)はランではなく、カヤツリグサ科スゲ属の植物。大きな花穂が狸のシッポに見える。この場所以外で見かけたことがない。

黄色が鮮やかなキジムシロ(雉莚)。

いっとき、道路を離れて採石場跡を歩く。掘削された山肌は、安山岩の柱状節理が見事。

草地に咲いていたノビネチドリ(延根千鳥)。

潮が引いた海岸の岩場に、ポツンと咲いていた白い花は、ハマハタザオ(浜旗竿)と思われる。エゾノイワハタザオ(蝦夷の岩旗竿)にも似るが、こちらは亜高山帯に生える。

豊浦町地区に入ると、磯遊びがしたくなるような岩海岸になった。左の二つの岩塔は「サンタロナカセ岩」。冬にタラ漁へ出たまま帰らない息子を浜辺で待ち続けた父で漁師の三太郎と息子の嫁が、春には岩になってしまったという悲しい民話が残る。

豊浦町地区の集落と恵山(617.6m)。

クサノオウ(草の黄、瘡(くさ、皮膚病の総称)の王)。茎を折ると、濃い黄色の汁が出てくる。漢方でも利用される薬草だが、強い毒性があるため有毒植物として扱われるとのこと。

豊浦町地区の民家の間を静かに抜けて、山道に入る。海岸通りとは違う山野草が次々と目に入る。
こちらはムラサキケマン(紫華鬘)。花の形が、仏殿に吊るす仏具の華鬘(けまん)に似ている。

コンロンソウ(崑崙草)。和名は花が白いことを中国の崑崙山脈の雪に見立てたとする説が一般的だが、なぜ中国の山なのだろうか。

標高差100m余りの急な登りが終わると、少しなだらかな場所に出た。スイセンの花が咲いていたので、かつては住居か畑があったのだろう。一角にはまだ、ヤマザクラの花が残っていた。

ワラビの茎に掴まって、エゾハルゼミが羽化中であった。

ヒトリシズカ(一人静)。

お目当ての一つだったユウシュンラン(祐舜蘭)。和名は東北帝国大学農科大学(今の北海道大学)の助教授であった植物学者の工藤祐舜(くどう ゆうしゅん)氏に由来しているという。

採石場跡の上部を通る山道から、日浦岬灯台を望む。手前の道路に、向こうからこちらに抜けてきた「日浦洞門」のトンネルも見えている。

昨年に同じコースを通ったとき、山道にビール瓶が埋まっていたので「生活臭があるな~」と何気なく写真を撮った。あとで整理していると、瓶の底部に近い側面に「ルービラ■■」と、右から左の向きに銘柄が書いてあった。戦前のものに違いないと調べた結果、1913年(大正2年)から1942年(昭和17年)頃まで北九州の門司で醸造されていた「サクラビール」と推定していた。
今回もこれを見つけて枯れ葉や土に半分埋まった瓶をそっと引き抜いたら、やはり「サクラビール」の瓶で、無傷のうえ、何と錆びた王冠まで付いていてビックリ。一年間の「気持ちの引っ掛かり」が解けて満足した(個人的なことですいません、最後に「おまけ」もあります)。

下草がまばらなC130m付近でランチタイム。周囲のブナなど、緑葉に心が和む。

二枚の葉を開いたブナの赤ちゃんは、コブナ(^_^)。

山道を歩いていくと突然、エゾライチョウ(蝦夷雷鳥)が地面から飛び立った。エゾライチョウを観察する機会はごく少ないが、普段は地面に居て、巣は地面を窪ませてそこに草などを敷いて作るという。
ヒナが一羽、取り残されていた。木の枝や枯れ葉の陰に首を突っ込んで、頭を隠していた。間もなく親鳥が戻ってくることを期待して、早々に離れた。

ルイヨウボタン(類葉牡丹)は、葉が牡丹に似ている。

オオサクラソウ(大桜草)は山道に入って暫くしてから、あちらこちらで観察できた。群落を形成している箇所もあった。

チゴユリ(稚児百合)。

シラネアオイ(白根葵)の花(本来はガク片)は、二輪だけ見かけた。

日浦町の集落に下りてくると。カキドオシ(垣通し)の花が見事な群落を作っていた。シソ科の植物で、古くから薬草として用いられてきたという。

日浦稲荷神社の本殿に上がる参道の階段で、全体集合写真に納まる。

13時18分、昆布干し場の脇に停めた車に到着。点呼と挨拶の後、現地で解散した。
海岸に沿う道路と逆方向の山道を、3時間ほどのんびりと散策し、春から初夏の植生と、展望を楽しむことができた。エゾライチョウとの思わぬ出会いもあった。
【おまけ】「サクラビール」瓶の商標。御年80歳以上か…。

日浦町地区から恵山岬方面に向かう国道278号線「サンタロトンネル」の手前で、海岸沿いに道道41号線(旧・国道)が分岐している。この道を少し入った先の昆布干し場の脇に車を停めさせてもらった。
9時40分、豊浦町地区に向けて出発。海岸に落ち込む岸壁をくりぬいた、「日浦洞門」と呼ばれる7つのトンネルに向かう。

最初に見かけたのはオドリコソウ(踊子草)。花の形が、笠をかぶった踊り子に見える。

二つ目のトンネルを出たところで、俄雨が降ってきた。10分ほどで雨雲が抜けそうなので、三つ目のトンネル内で雨宿り。

頭上の岩場には、朱色が鮮やかなエゾヤマツツジ(蝦夷山躑躅)。

狭い道路を、車に注意しながら進む。前方には採石場の跡。山道は、あの岩場の上を通っている。

タヌキラン(狸蘭)はランではなく、カヤツリグサ科スゲ属の植物。大きな花穂が狸のシッポに見える。この場所以外で見かけたことがない。

黄色が鮮やかなキジムシロ(雉莚)。

いっとき、道路を離れて採石場跡を歩く。掘削された山肌は、安山岩の柱状節理が見事。

草地に咲いていたノビネチドリ(延根千鳥)。

潮が引いた海岸の岩場に、ポツンと咲いていた白い花は、ハマハタザオ(浜旗竿)と思われる。エゾノイワハタザオ(蝦夷の岩旗竿)にも似るが、こちらは亜高山帯に生える。

豊浦町地区に入ると、磯遊びがしたくなるような岩海岸になった。左の二つの岩塔は「サンタロナカセ岩」。冬にタラ漁へ出たまま帰らない息子を浜辺で待ち続けた父で漁師の三太郎と息子の嫁が、春には岩になってしまったという悲しい民話が残る。

豊浦町地区の集落と恵山(617.6m)。

クサノオウ(草の黄、瘡(くさ、皮膚病の総称)の王)。茎を折ると、濃い黄色の汁が出てくる。漢方でも利用される薬草だが、強い毒性があるため有毒植物として扱われるとのこと。

豊浦町地区の民家の間を静かに抜けて、山道に入る。海岸通りとは違う山野草が次々と目に入る。
こちらはムラサキケマン(紫華鬘)。花の形が、仏殿に吊るす仏具の華鬘(けまん)に似ている。

コンロンソウ(崑崙草)。和名は花が白いことを中国の崑崙山脈の雪に見立てたとする説が一般的だが、なぜ中国の山なのだろうか。

標高差100m余りの急な登りが終わると、少しなだらかな場所に出た。スイセンの花が咲いていたので、かつては住居か畑があったのだろう。一角にはまだ、ヤマザクラの花が残っていた。

ワラビの茎に掴まって、エゾハルゼミが羽化中であった。

ヒトリシズカ(一人静)。

お目当ての一つだったユウシュンラン(祐舜蘭)。和名は東北帝国大学農科大学(今の北海道大学)の助教授であった植物学者の工藤祐舜(くどう ゆうしゅん)氏に由来しているという。

採石場跡の上部を通る山道から、日浦岬灯台を望む。手前の道路に、向こうからこちらに抜けてきた「日浦洞門」のトンネルも見えている。

昨年に同じコースを通ったとき、山道にビール瓶が埋まっていたので「生活臭があるな~」と何気なく写真を撮った。あとで整理していると、瓶の底部に近い側面に「ルービラ■■」と、右から左の向きに銘柄が書いてあった。戦前のものに違いないと調べた結果、1913年(大正2年)から1942年(昭和17年)頃まで北九州の門司で醸造されていた「サクラビール」と推定していた。
今回もこれを見つけて枯れ葉や土に半分埋まった瓶をそっと引き抜いたら、やはり「サクラビール」の瓶で、無傷のうえ、何と錆びた王冠まで付いていてビックリ。一年間の「気持ちの引っ掛かり」が解けて満足した(個人的なことですいません、最後に「おまけ」もあります)。

下草がまばらなC130m付近でランチタイム。周囲のブナなど、緑葉に心が和む。

二枚の葉を開いたブナの赤ちゃんは、コブナ(^_^)。

山道を歩いていくと突然、エゾライチョウ(蝦夷雷鳥)が地面から飛び立った。エゾライチョウを観察する機会はごく少ないが、普段は地面に居て、巣は地面を窪ませてそこに草などを敷いて作るという。
ヒナが一羽、取り残されていた。木の枝や枯れ葉の陰に首を突っ込んで、頭を隠していた。間もなく親鳥が戻ってくることを期待して、早々に離れた。

ルイヨウボタン(類葉牡丹)は、葉が牡丹に似ている。

オオサクラソウ(大桜草)は山道に入って暫くしてから、あちらこちらで観察できた。群落を形成している箇所もあった。

チゴユリ(稚児百合)。

シラネアオイ(白根葵)の花(本来はガク片)は、二輪だけ見かけた。

日浦町の集落に下りてくると。カキドオシ(垣通し)の花が見事な群落を作っていた。シソ科の植物で、古くから薬草として用いられてきたという。

日浦稲荷神社の本殿に上がる参道の階段で、全体集合写真に納まる。

13時18分、昆布干し場の脇に停めた車に到着。点呼と挨拶の後、現地で解散した。
海岸に沿う道路と逆方向の山道を、3時間ほどのんびりと散策し、春から初夏の植生と、展望を楽しむことができた。エゾライチョウとの思わぬ出会いもあった。
【おまけ】「サクラビール」瓶の商標。御年80歳以上か…。
