函館市(旧・南茅部町)の尾札部地区で太平洋に注ぐ尾札部川の遡行は、当会で2017年から恒例の自然部行事になっている。白色や薄緑色の岩盤が現れた美しい河床を流れる滑や小滝、淵、瀞を楽しみ、岸辺の植物を愛でながら、標高60mにある大滝までを往復した。参加は22名。
遡行に先立つ8月18日(火)、会の有志8名で取り付き林道の草刈りを行った。600mほどの距離だが、藪になると不快で、羆と鉢合わせする危険がある。
当日は、南茅部斎場の駐車場の片隅に車を置かせてもらい、出発の準備を済ませる。駐車場の入り口に立つキタコブシ(北辛夷)の木が、実を付けていた。長さ7~8cmで、握りこぶしに似た凸凹がある。この形がコブシの名前の由来だとか。
準備を整えた女性メンバー。大和撫子の定義が変わったのか…。
9時30分に出発。草刈り済みの林道跡を快適に進む。
この時期の常連であるクサギ(臭木)の花。葉や枝を傷付けると異様な匂いがするとか。秋になると、5枚のガクを纏った実が面白い形を見せる。
9時40分に入渓。例年より水量が少なく、穏やかな沢をゆっくりと遡る。
岸辺で見られたカリガネソウ(雁金草)。昨年の遡行で見つけ、名前が判明した。弓形に伸びた雄しべと花柱の形が、家紋の「結び雁金(むすびかりがね)」に似ていることから名付けられたとの説も。
ツリフネソウ(釣舟草)。
アカシデ(赤四手)の果穂(ちょいとピンボケ)。シデとは、その形が玉串や注連縄に垂れ下がる紙(四手)に似ているところから名付けられたとされる。
リョウブ(令法)の花とエゾスジグロシロチョウ?。令法という名は、昔は飢饉のときの救荒植物として育て蓄えることを法で決められたから付いたといわれるが、語源ははっきりしないらしい。ちなみに、若葉が食せるようだ。
沢に入って25分ほど経過したが、相変わらず穏やかな様相が続き、快適に進む。
次第に谷が狭まり、ゴルジュ状になってきた。
この前後から現れ始めた瀞、淵、小滝。
10時50分、標高60m地点の大滝に到着。
初到着のメンバー。
例年より水量が少ないが、姿が良い。
陽射しを浴びて輝く。
ちなみに、これは去年(2019年)8月18日に訪れた際の大滝。台風第10号の雨により、水量が多かった。
11時5分、大滝を後にする。岸辺でみかけたミミコウモリ(耳蝙蝠)の花。
左岸から合流する枝沢を10mほど登ると、岩陰に細い滝が落ちていた。
本流の上に垂れ下がったヒロハツリバナ(広葉吊花)。実には横に張り出した4つの翼があり、十字形に見える。
途中の河原でランチタイムとする。
沢を被う緑葉が美しい。
小石が多い河原にあった小さな白い花は、フキユキノシタ(蕗雪の下)か。
12時25分、沢を離れる。林道を戻る途中で見かけたヤマジノホトトギス(山路の杜鵑草)とジャコウソウ(麝香草)。
林道から3mほど上の林内にある馬頭観音の碑。南茅部町史によると、能登(石川県)の出身で尾札部に店舗を構えた実業家の竹中重蔵(乗合自動車事業を創業したほか牧場を経営し、馬・牛・狐・羊などを飼育)が、昭和11年6月30日に建立したとのこと。詳しくは
こちらの南茅部町史をどうぞ。
12時45分、駐車場に到着。挨拶を済ませて解散した。
低い雲はかかっていたが時折陽射しもあり、爽やかな日和だった。心配された虻もほとんど現れず、沢の瀬音と綺麗な河床も相まって、楽しい沢歩きを満喫することができた。また、新たな発見も多い一日であった。