この時期の定番となっている自然部企画として、厚沢部町の太鼓山(171m)と俄虫沢を訪れ、「春の妖精」たちの姿を愛でた。参加はフリーを含めて22名。
道の駅「あっさぶ」で開店早々の買い物を済ませ、太鼓山スキー場の駐車場を9時32分に出発。林道をゆっくり登っていくと、脇にはいくつもの植生が目に入ってくる。先ず、オオウバユリ(大姥百合)の大きな葉。
花の後ろにある「距」が長いナガハシスミレ(長嘴菫)。別名はテングスミレ(天狗菫)。北海道南部と、本州の島根県までの主に日本海側に分布するという。
カタクリ(片栗)2態。
シラネアオイ(白根葵)は時期が早いのか、見かけた数は少なかった。
キバナイカリソウ(黄花碇草)の蕾が膨らんで、花を開くまでの4つの姿が見られた。
クロミノエンレイソウ(黒実延齢草)。
ヒトリシズカ(一人静)は、群生すると賑やか。
道幅が広いので、辺りを見回しながら歩いても大丈夫。
明るい空色のエゾエンゴサク(蝦夷延胡索)。赤紫色の花を付けた個体も見られる。
キクザキイチゲ(菊咲一華)。花弁のように見えるのは、がく片。
C120付近で林道は行き止まる。山道に入る前に休憩と水分補給。
山道に入ってすぐ、メンバーのひとりが二つのフデリンドウ(筆竜胆)の新芽を見つけた。「良い目をしているなあ~」と感心する(二つの目で二つの芽を発見)。
センボンヤリ(千本槍)は年に2回花を咲かせる(春型と秋型)。こちらは当然ながら、春型の花茎。
盛りは「これから」とか「まだまだ先」という植生たちも…。[左上]キジムシロ(雉莚)の蕾、[右上]ツルアリドオシ(蔓蟻通)の葉、[左下]クルマユリ(車百合)の葉、[右下]ヒメアオキ(姫青木)は光沢のある赤い実とテカテカ反射する葉が印象的な常緑低木。
太鼓山の頂上で、「はこだて自然倶楽部」ツアーのご一行とすれ違い、情報を交換した。
頂上を越えると、花の数が一段と増えてきた。カタクリが群生する斜面。
こちらはキクザキイチゲだらけの斜面。
太鼓山の下りから左前方に、若葉を開いてきたブナ(橅)と、その先はこの後に辿る標高点180ピーク。
C100の最低コルを通過し、標高点140ピークに向かう。
標高点140ピークを越え、ブナの大樹が立つ尾根を通って、C135付近で鶉地区の国道227号線「目名橋」付近から上がってきた林道に出る。
広くて乾いている林道で、時間をたっぷりとってランチタイムとする。
林道を200mほど進んで、標高点180ピークに向かう山道に入っていく。
この付近で見られた植生は、[左上]スミレサイシン(菫細辛)、[右上]アズキナ(小豆菜)、別名ユキザサ(雪笹)、[左下]クロモジ(黒文字)の花。枝や葉に精油成分が含まれ、枝を少し削ると甘く華やかでとても上品な香りがするため、高級爪楊枝にも使われる、[右下]ニリンソウ(二輪草)の花も出てきた。
地味なオクノカンスゲ(奥寒菅)、別名エゾカンスゲ(蝦夷寒菅)。
標高点180ピークを越えて俄虫沢に降り立つと、また賑やかな花園が迎えてくれた。陽が照って頭を持ち上げてきたカタクリの花。
花の蕾を二つ付けたニリンソウ。花弁のように見えるのはがく片なので、緑色になる個体もある(ミドリニリンソウ)。
コバイケイソウ(小梅蕙草)の大きな葉。
本日のメインイベントであるエゾノリュウキンカ(蝦夷立金花)の大群落地が見えてきた。
エゾノリュウキンカの群生地を背景に、恒例の集合写真に納まる。
エゾノリュウキンカの群生は、毎年のことながら圧巻。群生地の中に入って土や植物を荒らさないようにしたい。
花をアップで撮ると、五弁(稀に四弁)花の黄色と濃い緑葉との対比が美しい。
雪解けとともに、ミズバショウ(水芭蕉)とエゾノリュウキンカは一緒に花を咲かせる。
そのほかに見かけた植生4態。[左上]俄虫沢で良く見かけるホソバエゾエンゴサク(細葉蝦夷延胡索)、[右上]キバナノアマナ(黄花甘菜)、[左下]ネコノメソウ(猫目草)の名前は、果実ができると2つに裂けて種が現れ、それが猫の細い瞳孔のように見えるところから、[右下]花の時期が終わりに近づいたフクジュソウ(福寿草)。
大トリは、端正なキクザキイチゲで締め。
キタコブシ(北辛夷)の花に見送られると、俄虫沢の出口はそぐそこ。
広い農地に出ると、北には乙部岳(1016.9m)一角の峰々が…。
沢を出て畔道と農道を歩き、駐車場には13時43分到着。
駐車場で点呼をとり、全員の安着を確認して解散した。
約3時間20分の逍遥(昼食時間を除く)で、たくさんの「春の妖精」たちに出会えた。これから盛りを迎える植生も多くあり、暫くは山野草探訪が楽しめそう。
この日は函館市(五稜郭公園)で「さくらの開花」が観測された(平年より10日早く、昨年より4日遅い開花)。